基礎研究

当研究室で取り組んでいる基礎研究についてご紹介します。当研究室では慶應義塾大学医学部総合医科学研究棟(リサーチパーク)内の競争的な研究室3つを確保し以下の研究に取り組んでいます。

リサーチパーク6S8

2018年より3アカデミア、3製薬企業が協力し、病因・病態解明、治療への応用、創薬研究へ活用を通じて患者さんへの還元を目指し、免疫炎症性難病コンソーシアム(https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2018/5/30/180530-1.pdf)が設立されました。本研究室はこの産官学連携拠点として活動を行っております。多彩な免疫炎症性難病患者検体を用いた高精度のマルチオミックスデータに質の高い臨床情報を組み合わせ、最先端のバイオインフォマティックス技術による統合解析により、上記の目的の達成を目指しています。

また、2011年より自己免疫疾患創薬研究を主題として、関節リウマチとシェーグレン症候群を主とした全身性自己免疫の病態解明およびそれに基づく新規治療薬の開発に関する研究に進めております。分子細胞生物学、免疫学の手法を駆使し、TおよびB細胞の機能、自己抗体産生機序、生物学的製剤の作用機構に関する研究に一貫して取り組み、最近ではCOVID-19に関する研究も開始しています。研究室常勤10名および教室内外の関係各所と綿密に連携し、ヒト自己免疫研究のブレークスルーを目指しています。


リサーチパーク6N5


リサーチパーク6N5(免疫細胞機能制御)研究室は難治性自己免疫疾患の病態における免疫担当細胞の機能に焦点をあて、治療標的となる細胞の同定および治療薬の創製を目指し、2015年1月に設立されました。本研究室では、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、血管炎、関節リウマチ、IgG4関連疾患、脊椎関節炎などの難治性自己免疫疾患の新規リンパ球サブセットの機能解析を基にした新規治療標的分子の探索、患者検体および疾患モデル動物を用いた病態形成や薬剤抵抗性について分子レベルでの機序の解明、新規治療薬創出を目指した低分子化合物を用いた薬効に関するエビデンス構築など幅広い研究テーマに取り組んでいます。また、日々の研究活動を支える、セルソーター、セルアナライザー、定量PCR装置、血液中微量タンパク質検出装置など細胞における遺伝子およびタンパク質発現解析用の各種機器が設置され、研究環境は十分に整備されています。



リサーチパーク4S9

当4S9研究室(自己免疫疾患病態解析研究室)はBedside to Bench, Bench to Bedsideの理念の実現を目指し研究活動を推進しております。研究内容としては製薬企業との共同研究として大型血管炎と成人スチル病、関節リウマチなどのプロテオミクスおよびCyTOF解析、2021年度からは金子教授の指導の下成人スティル病におけるIL-6阻害とサイトカインストームの関連性の解析研究を行っているほか、メトトレキサート使用中の関節リウマチ患者に発生するリンパ増殖性疾患(通称MTX-LPD)の発症およびMTX中止後の消退メカニズムに関する研究、TocilizumabをはじめとするIL-6阻害薬におけるシグナル阻害強度の解析、免疫抑制療法中のCMV再活性化の臨床特徴およびメカニズムの解明にむけた研究、原発性シェーグレン症候群の患者末梢血単球でのBAFF受容体発現機構におけるToll様受容体の関与の解析研究など幅広いテーマを扱っております。

大型血管炎(高安動脈炎・巨細胞性動脈炎)は、血管壁肥厚が持続することで閉塞・狭窄・瘤など不可逆的な血管病変を形成します。当研究室では、血管壁肥厚に関与する免疫担当細胞を詳細に解析し、本質的な異常を同定します。現在は、マクロファージ、T細胞、血管内皮細胞について解析を進め、治療薬であるトシリズマブ(アクテムラ®)による薬効を検証している他、新規診断・治療薬の実装を通じた大型血管炎の予後改善を目指しています。