基礎研究

当研究室で取り組んでいる基礎研究についてご紹介します。当研究室では慶應義塾大学医学部総合医科学研究棟(リサーチパーク)内の競争的な研究室3つを確保し以下の研究に取り組んでいます。

リサーチパーク6S8

リサーチパーク6S8研究室では、2024年度よりリウマチ膠原病内科と興和株式会社との共同研究を開始しています。当科の得意とする臨床情報が紐づいた患者検体の収集およびその詳細解析と、興和株式会社の持つ医薬品シーズの良いところを持ち合って、臨床に還元できるような成果を目指します。

本研究室ではテーマの一つとして各種自己免疫疾患の病変部位のリンパ球と抗原特異性に着目した研究1-5を行っており、分子レベルでどのような自己免疫応答が起こっているのか、そこに特異的な分子は何かを明らかにすることで、病態解明および創薬シーズ探索を行っています。


リサーチパーク6N5


リサーチパーク6N5(免疫細胞機能制御)研究室は難治性自己免疫疾患の病態における免疫担当細胞の機能に焦点をあて、治療標的となる細胞の同定および治療薬の創製を目指し、2015年1月に設立されました。本研究室では、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、血管炎、関節リウマチ、IgG4関連疾患、脊椎関節炎などの難治性自己免疫疾患の新規リンパ球サブセットの機能解析を基にした新規治療標的分子の探索、患者検体および疾患モデル動物を用いた病態形成や薬剤抵抗性について分子レベルでの機序の解明、新規治療薬創出を目指した低分子化合物を用いた薬効に関するエビデンス構築など幅広い研究テーマに取り組んでいます。また、日々の研究活動を支える、セルソーター、セルアナライザー、定量PCR装置、血液中微量タンパク質検出装置など細胞における遺伝子およびタンパク質発現解析用の各種機器が設置され、研究環境は十分に整備されています。



リサーチパーク4S9

当4S9研究室(自己免疫疾患病態解析研究室)はBedside to Bench, Bench to Bedsideの理念の実現を目指し研究活動を推進しております。研究内容としては製薬企業との共同研究として大型血管炎と成人スチル病、関節リウマチなどのプロテオミクスおよびCyTOF解析、2021年度からは金子教授の指導の下成人スティル病におけるIL-6阻害とサイトカインストームの関連性の解析研究を行っているほか、メトトレキサート使用中の関節リウマチ患者に発生するリンパ増殖性疾患(通称MTX-LPD)の発症およびMTX中止後の消退メカニズムに関する研究、TocilizumabをはじめとするIL-6阻害薬におけるシグナル阻害強度の解析、免疫抑制療法中のCMV再活性化の臨床特徴およびメカニズムの解明にむけた研究、原発性シェーグレン症候群の患者末梢血単球でのBAFF受容体発現機構におけるToll様受容体の関与の解析研究など幅広いテーマを扱っております。

関節リウマチの病態には各種T細胞が関与していることが知られています。当研究室では、関節リウマチに対してIL-6阻害剤であるトシリズマブを投与すると、血液中の制御性T細胞(Treg)が増加し、疾患活動性に関連することを示しました。さらに、Tregには免疫抑制作用が異なる亜分画が存在することが知られており、特にトシリズマブ投与後にresting Tregが増加することを示しました。また、治療中にMTXを減量していく群では全体的な免疫抑制性Tregが健常人と同様のレベルにまで増加し、この変化が早期に見られる群は治療後の経過が良好であることを示しました。以上から、関節リウマチに対するIL-6阻害剤の作用機序とインパクトを説明し得る重要な知見が得られました。

大型血管炎(高安動脈炎・巨細胞性動脈炎)は、血管壁肥厚が持続することで閉塞・狭窄・瘤など不可逆的な血管病変を形成します。当研究室では、血管壁肥厚に関与する免疫担当細胞を詳細に解析し、本質的な異常を同定します。現在は、マクロファージ、T細胞、血管内皮細胞について解析を進め、治療薬であるトシリズマブ(アクテムラ®)による薬効を検証している他、新規診断・治療薬の実装を通じた大型血管炎の予後改善を目指しています。