キャリアプランの提案

先輩方からの声

細川 貴司 先生(大阪急性期・総合医療センター)

Q. 現在どのようなお仕事をされていますか
慶應で二年間お世話になった後は、母校の大阪大学で四年間基礎研究を行い博士課程を修めた後、現在は市中総合病院のリウマチ科で専門診療・臨床教育を中心に働いています。
 
Q. 慶應での経験がどのように生かされていますか
私が研修医の頃は、わが国にリウマチ学領域のガイドラインは殆ど無く、欧米でリコメンデーション/ガイドラインが次々と出てきていたくらいの頃でした。免疫抑制剤の使用方法など、日本国内の各施設で定まったものがない印象があり、大阪での専門研修を積む中で、他学閥でのリウマチ膠原病診療のやり方を見てみたいという興味がありました。縁あって講演の拝聴や慶應義塾大学病院の見学をさせて頂いた後、二年間専攻医としてお世話になりました。竹内教授や、今は様々な大学の教授になられている各先生方等からカンファ、回診、病棟、外来で直接指導頂き、日々貴重な学びの機会を得られていた事が思い出されます。その後様々なガイドライン/リコメンデーションが出ていますが、それらが作られるまでにリウマチ学においてどういった歴史的背景があるかなど、リウマチ学の歴史ある教室ならではの知識を得て納得したものがありました。
 
Q. 入局を迷う研修医・医学生へのメッセージをお願いします!
大学医局というのは研究・教育・専門診療を軸としていますが、医療に携わる様々な人々が交わる場所です。私の時も私以外に他の病院から来られた先生方や慶應一筋の先生方など様々な人がいて色々な道に向かわれていますし、その後また別の場所でお会いすることもあります。その時々の状況もありますので一概には言えませんが、各個人が思う自分の医師のあり方を目指す中で、色々なやり方があることを知ることが出来、大学医局に入ってしまったらキャリアが固定されて抜け出せないというようなネガティブなものではないと考えます。
また、患者さんを診察して得られた情報から、何が問題点であり、次の治療をどうするか、なぜその治療を選ぶのかということを自分にも他人にもきちんと説明できる様になるという事は内科医の基本ではありますが、慶應のリウマチ・膠原病内科での経験は私の礎となっています。まずは先生方にあって話を聞いてみては如何でしょうか。
 

仁科 直 先生(仁科医院)

Q. 現在どのようなお仕事をされていますか
実家の診療所を継承し、内科・リウマチ科開業医として働いています。また週に1日は診療所を休診にして地域の基幹病院でリウマチ内科外来を担当させてもらっています。
 
Q. 慶應での経験がどのように生かされていますか
ここに書ききれないほどありますので、主として2つ、身体所見と治療について記載します。診察では身体所見を第一に重要視し、採血やその他検査は補助という原則を常に意識しています(検査も重要ですが)。他院でCRP陰性だからリウマチの活動性がない、と言われたリウマチ患者さんの関節が腫れていることはしばしば経験します。治療に関しては必ず疾患・病態に即して行うべき治療をまずは検討しています。市中病院や一般診療所では併存疾患や経済的状況を勘案して行うべき治療が行えないことが多いので、何をどう考えて現在の治療を選択したのか説明できるように常に注意しています。
 
Q. 入局を迷う研修医・医学生へのメッセージをお願いします!
リウマチ・膠原病は非常に不思議な疾患の集まりです。日々新鮮です。飽きることなく仕事を続けることができます。どの疾患もまだまだ研究の余地が大きいので、大学病院でアカデミックな進路をとることもよいです。市中病院ではリウマチ・膠原病を敬遠する医師も多いので、非常に頼られます。興味があるという方には自信をもってお勧めできる進路です。
 

古屋 善章 先生(日本生命保険相互会社東京健康管理所)

Q. 現在どのようなお仕事をされていますか
現在、私はオフィスワーカー主体の企業の専属産業医をしております。また、週に半日、病院でリウマチ・膠原病の専門外来も行っています。産業医と聞くと、健康診断の結果をみて、生活習慣病の保健指導を行うイメージが強いかもしれませんが、最近の産業医の業務は幅広いものになりました。働く人の健康管理を専門的立場で指導する医師として、労働による健康障害の予防と心身の健康保持増進を職務とするのが産業医です。普段は、健康診断の実施や事後措置、長時間労働者やストレスチェックに関連する医師面接、職場巡視、健康教育、健康相談等の定例的な仕事もありますが、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行下では、職場での感染対策の助言、感染者状況の管理、ワクチンの職域接種等も行いました。また、健康相談として通院中の病気に関する相談を受けることは従来からありますが、最近では、治療と職業生活の両立支援、即ち悪性腫瘍や他の病気の治療中であっても仕事を続けたい方に対して、どのような配慮が適切か、本人はもとより主治医の意見も確認して、専門的立場で支援することが増えております。そのなかには、リウマチ・膠原病も含まれ、慶應義塾大学病院リウマチ・膠原病内科に通院中の方の支援にも携わり、主治医には大変お世話になっています。
 
Q. 慶應での経験がどのように生かされていますか
私は、2001年に慶應義塾大学医学部を卒業し、2003年からリウマチ・膠原病内科の大学院生として、多くの先生方のご指導ご支援のもと、研究ならびに臨床を学びました。私が、リウマチ・膠原病を選択した理由は、難解な病態に大変興味深く感じたことが最も大きかったのですが、目の前の患者さんを専門分野に限らず様々な視点で診療できること、様々な状況でリウマチ・膠原病の専門医の役割が大きいことも関係しています。慶應義塾大学病院に在籍していたとき様々な診療科の先生に接することができ、多くの知識を得たこと、そしてその人脈は私にとって大きな財産となり、産業医の仕事にも役立っております。今日では、リウマチ・膠原病と診断されて治療を開始しても、仕事を辞めることなく働き続ける方は少なくありません。しかし、社会生活が今まで通りにはならないと苦労されることは想定されます。そのとき、産業医として、さらに専門医として、その方を支えることが出来ればと活動しており、そこでも慶應義塾大学病院での経験が役立っています。
 
Q. 研修医・医学生へのメッセージをお願いします!
日々、研修や勉強に大変かと思いますが、学ぶことの楽しさは感じているかと思います。また、自分が置かれている環境は人それぞれで、刻々と変化し、さらに、社会全体の環境も変動し、AIや働き方改革等医療現場にも様々な流れがあります。しかし、皆様自身が抱く医師を目指した経緯や目指す医師像は、そう変わらないものかと思います。私は、多種多様で難解なリウマチ・膠原病に興味を抱き、Specialistを目指して入局、一方で、Generalistとして多面的に支援する医師に憧れ、これまでの経験を活かして産業医のProfessionalを目指しています。研修医や医学生の皆様も、「学ぶことの楽しさ」を感じる分野を見つけ活躍することを願っております。ときには、悩むこと、つらい時期もあるかと思いますが、「医師を目指した経緯や目指す医師像」を忘れず、くれぐれも体調を崩さないように無理はしないで、頑張ってください。最後になってしまいましたが、慶應義塾大学のリウマチ・膠原病内科は、多くの先生からの温かい指導のもと、伝統的な実績から最新の知見まで多くのことを学び診療や研究に生かすことができます。そして、幅広いキャリアプランを描くことができるのも大きな特徴かと思います。皆様のこれからの益々のご活躍を祈念しております。
 

鈴木 和子 先生(グラクソスミスクライン株式会社 メディカル・開発本部 安全性部門)

Q. .現在どのようなお仕事をされていますか
製薬企業で勤務をしております。製薬企業の中の医師のキャリアとして大きく3つ、開発・メディカルアフェアーズ(MA)・ファーマコビジランス(PV)の分野がありますが、私はPV部門におり、医療機関から挙がってくる副作用の報告や、薬剤や医療機器に関するトラブルの情報を収集し、添付文書の改訂を行ったり、安全に薬剤を使用するための説明資材等を作成する業務に関わっています。こういった情報は、日本も国外も1つの薬剤について世界共通で同じように適切な対応が必要となるため、日本の情報を基に各国の担当者とディスカッションを行い、より適切な情報を皆さんにお届けできるよう努めています。
 
Q. 慶應での経験がどのように生かされていますか
慶應では常に自己免疫疾患の最先端の治療が行われており治験も積極的に行われているため、分担医師として治験概要の説明や同意取得、処方や経過観察に加わることができたことで、現在の仕事では「治験中に現場でどのようなことが困り得るのか」「どのような情報をどのようなタイミングで求められるのか」といったような、現場目線の視点から物事を考えられるという点で、非常に役に立っております。
また免疫学の基礎的な知識は、自己免疫疾患だけではなく免疫チェックポイント阻害薬など、他の分野で用いられている薬の理解にも応用できると感じますし、自己免疫疾患では全身様々な臓器に障害がおこるため、各科の先生方に相談をさせて頂き教えて頂いた知識も、企業で幅広い分野の薬に関わる上で役に立っております。
 
Q. 入局を迷う研修医・医学生へのメッセージをお願いします!
昨今の社会情勢は目まぐるしく動いていて、将来自分がどこで何をしているのか計画を立てた通りになるかというとそうではなく、思いもよらないことが沢山おこります。私自身も卒業大学医局から、縁あって慶應医局へお世話になり家庭の事情を経て、まさか自分が企業勤務で外国人と働いているとは想像しておりませんでした。しかしながら置かれた場所で最大限できることに取り組むことや、医局の先生方など人と人との繋がりを大事にすることが、振り返ってみると都度都度新しいキャリアのきっかけを運んでくれたと感じます。
最近では、コスパや損得で入局や大学院進学等を考える先生もおられますが、医師のキャリアは実際はもっと泥臭く、周り道も沢山ありますし現在の取り組みが将来どのように役に立つのかよくわからず悩むことも多々ありショートカットはないと思います。しかしそういった無駄に見えるものも必ず時間が経ってから点と点は繋がります。そして点がどのように繋がるかは出会った人でかなり左右されると思います。慶應の先生方はOBOGの先生方を含め多彩な背景やキャリアをお持ちですので、先生方とのコミュニケーションを通じて、自分だけでは思いもつかなかったようなチャンスに繋がるという経験を、皆さんにもぜひして頂きたいと思います。
一方で、企業勤務というとまだまだ数が少ないため若い方からもよく質問を受けますが、臨床にせよ企業にせよ医師が求められる基本は「臨床をしっかり自分の頭で考えて手を動かす経験をどの位積んだか」に尽きますとお答えしています。また大学院で学ぶような、過去の論文と自分の導いた結果を上手く融合させ他人をいかに説得するのか、という技術もやはり一通り身に着けることでキャリアチャンスは確実に広がります。そういった点で、慶應の先生方は常に臨床においても研究においても思考プロセスを非常に大事にされますので、ぜひ多様性と深い考察に揉まれる経験を経て、大きく飛躍を目指して頂きたいです。
 

研修コース全体図

当研究室の研修コースでは慶應義塾大学での研修と協力病院での研修を通してリウマチ・膠原病内科医として幅広い経験を積むことができます。また、大学院へ進学し研究を通してより深く疾患を理解する事もできます。

研修後キャリアプラン

当研究室でトレーニングを受けたあとのキャリアプランは豊富です。もちろん慶應義塾大学や他大学で研究・臨床・教育に邁進するだけでなく、リウマチ膠原病学を通じて全身を幅広く診るトレーニングを積み、generalistとして地域医療に貢献する先生も多いです。また子育てをしながら大学で診療や研究に取り組むこともできます。

生物学的製剤などを中心とした分子標的免疫治療が医薬品マーケットにおいて重要性を増す中、リウマチ膠原病医は製薬業界でのニーズも高いため、製薬企業で新規薬剤の開発に携わる先生もいらっしゃいます。他にも、医系技官や産業医として活躍している教室出身者もいらっしゃいます。このように、当教室は将来様々な分野で活躍する人材の育成に注力しています。

特にアカデミックポジションでは、北里大学、埼玉医科大学、東京歯科大学、東邦大学、東海大学、聖マリアンナ大学、藤田医科大学、名古屋市立大学、京都大学、University of Floridaなど様々な施設でご活躍されている先生方がいらっしゃいますので、若手同士の交流や勉強会などを通じて常に刺激し合いながら切磋琢磨しています。

当診療科出身者が活躍する主な施設

北里研究所メディカルセンター病院、埼玉医科大学総合医療センター、東京歯科大学市川総合病院、練馬総合病院、東武練馬中央病院、都立大塚病院、PL東京健康管理センター、宮内庁病院、山王病院、東京大学医科学研究所附属病院、国立病院機構 東京医療センター、東邦大学医療センター 大森病院、東邦大学医療センター、大橋病院、東京都立荏原病院、東海大学医学部、聖マリアンナ医科大学医学部、川崎市立川崎病院、川崎市立井田病院、社会福祉法人聖テレジア会、聖ヨゼフ病院、医療法人社団白寿会、田名病院、藤田保健衛生大学医学部、名古屋市立大学大学院医学研究科、京都大学大学院医学研究科、池田市立池田病院、医療法人圭良会、永生病院、日本生命保険相互会社東京健康管理所、エーザイ株式会社、University of Florida(順不同)