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当院への受診方法

当院ではスムーズな診療のため予約制としております。まずは、紹介状をご準備の上でお電話またはWEBでお申し込みをお願い致します。

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当院の診療の特徴

■全身性エリテマトーデス(SLE)診療■

2019年欧州リウマチ学会から全身性エリテマトーデス(SLE)の治療勧告が発行されました。
その中で「ステロイドは可能な限り少量を目指し、可能であれば中止すること」が推奨されました。
また2021年DORISというSLEの寛解基準を策定するグループが、目指すべきステロイド用量をプレドニゾロン換算で5mg/日に決定しています。

SLEの診療においてステロイドの使用は必要不可欠であることが多く、免疫抑制薬の併用が推進されたものの、ステロイドの持つ強力な抗炎症作用、免疫抑制作用に頼らなくてはならない局面が多いです。しかしその長期使用によって感染症・骨粗鬆症・血管イベントなどの副作用が必発であるため、疾患活動性の制御だけでなく、ステロイドを代表とする治療薬関連のダメージ(後遺症)を最小量にする取り組みを当院では推進しています。

当院に通院されるSLE患者さんの治療内容を集計すると、全体の19.1%の患者さんがステロイドを中止できています。また平均ステロイド(プレドニゾロン)用量は4.58 mg/日でした。このように当院では免疫抑制薬や分子標的薬を積極的に併用することで疾患を十分制御しながら可能な限り少ないステロイドで治療する取り組みを進めています。

■関節リウマチ(RA)診療■

当院には約2200名の関節リウマチの患者様が通院されております。
約6-7割の方が寛解という疾患活動性が良好にコントールされており、約8-9割の方が低疾患活動性を達成しております(DAS28, CDAI, SDAIはそれぞれ疾患活動性の指標です)。

最近ではアンカードラッグであるメトトレキサート(リウマトレックス®)に加えて、生物学的製剤やJAK阻害薬といった非常に有効性の高い薬剤も使用できるようになり、約6割の方がいずれかの薬剤を使用しております。

■成人スティル病診療■

成人発症スティル病(成人スチル病)は、原因不明で高熱、肝障害、関節炎、皮疹をきたします。稀な疾患ではありますが、当院では120名以上の患者さんが通院され、特に力を入れて診療しています。成人発症スティル病は初期にステロイドを用いて治療を行っても、ステロイド減量の過程で再燃することが多いことが問題となっていました。慶應病院リウマチ・膠原病内科主体では、この問題を打破すべく医師主導治験を実施し、IL-6受容体阻害薬であるトシリズマブ(商品名:アクテムラ) の有効性やステロイド減量効果を証明しました。その実績から、わが国では世界に先駆けて成人スティル病に対してトシリズマブが承認されています。当院ではすでに60名以上の成人スティル病のトシリズマブ使用経験があり、病気のコントロールに役立てています。

また、もともと成人発症スティル病は若年女性に多いとされてきましたが、近年私達のデータでも高齢発症の方が増加しており、高齢発症の成人発症スティル病は若年発症とは特徴が異なることもわかっています。高齢の方には適した治療法を選択するように努めています。


■炎症性筋疾患診療■

炎症性筋疾患は、手足などからだの筋肉に原因不明の炎症が生じ、これに伴い力が入らなくなったり、筋肉痛を起こしたりするのを基本的な症状とする病気です。筋肉以外にも、間質性肺疾患、特徴的な皮膚症状を呈し、その症状の組み合わせにより、「多発性筋炎」や「皮膚筋炎」といった個々の疾患に分類されています。

興味深いことに、これらの患者様の血液には、「筋炎の体質」とも呼べるような、自分の細胞や核成分に対する抗体(自己抗体)が存在し、合併症や予後に深く関連します。我々、慶應リウマチ・膠原病研究室は歴史的に、炎症性筋疾患の自己抗体の発見を通して、その診断に貢献してきました。

現在、当院では200例を超える患者様が通院しており、豊富な治療経験を有しております。近年では特に予後の悪い急速に進行する間質性肺疾患を合併した患者様に対しても、血漿交換などを含めた集学的治療を積極的に行っております。

■大型血管炎診療■

大型血管炎(高安動脈炎・巨細胞性動脈炎)は、全身の大型血管に炎症をきたす病気で、発症の機序は未だ不明です。治療が遅れると閉塞・狭窄・瘤など血管構造の変化がおこり得るため、早期診断が重要です。しかし、非特異的な症状で発症する場合が多いため、診断のためには専門家による診察が必要です。大型血管炎は希少疾患ですが、近隣医療機関、関連医療機関、他科からの紹介で、当院には100名以上の患者様が通院しています。特に、巨細胞性動脈炎はかつて日本人には稀とされていましたが、診療する機会が増えています。

当院では、保険適応薬であるトシリズマブ(アクテムラ®)をはじめとする生物学的製剤を併用し、ステロイドの使用量を減らすことで、安全に治療が継続できるように努めています。大型血管炎の診療では、病変の分布を正確に把握し、それを丁寧にフォローすることが血管合併症の予防に重要であり、PET-CTを含めた画像診断ツールを活用し、最適な診療を心掛けています。



■ANCA関連血管炎診療■

ANCA関連血管炎は、全身の小型血管に炎症を生じる自己免疫性疾患です。好中球という免疫細胞の構成成分に対する自己抗体(ANCA)が関連している血管炎のためその名前がついています。ANCA関連血管炎には、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の三疾患が含まれます。当院では2012年以降、2022年までの10年間で120人近くの患者さんを新たに診断しており、豊富な治療経験を有しています。ANCA関連血管炎は頭頸部、肺、腎臓、皮膚など全身の多彩な症状を生じるため、耳鼻科、眼科、呼吸器内科、腎臓内科、皮膚科など様々な診療科と密な連携を取りながら診療しています。

ANCA関連血管炎の治療としては長らく大量ステロイドに加えシクロホスファミドという免疫抑制薬が使用されてきましたが、免疫抑制による日和見感染症のほかに血球減少や二次性の発がんなどが問題視されてきました。2013年には血球減少や二次発がんのリスクの少ないリツキシマブ(リツキサン®)がANCA関連血管炎に使用できるようになり、当院でも2012年~2016年には初発症例の6%程度にしか使用されていなかったリツキシマブが、2017年~2022年には約3倍の18%の症例に使用されるようになりました。当院での2012年以降のANCA関連血管炎の全生存率は図に示す通りですが、さらなる予後改善を目指しております。具体的には、リツキシマブを使用しながらステロイドを少ない量で使用するプロトコールや、2022年夏に新規薬剤として使用可能となったアバコパン(タブネオス®)を採用し、予後の改善に努めています。


■サルコペニアに関する取り組み■

■強固な他科連携■

リウマチ・膠原病は、全身の臓器が障害される難治性疾患です。リウマチ・膠原病内科では臓器横断的に全身を診療しますが、慶應病院内の各臓器診療科である呼吸器内科、腎臓・内分泌・代謝内科、循環器内科、神経内科、消化器内科、血液内科、眼科、皮膚科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、整形外科、放射線科、各外科など様々な診療科エキスパートと密な連携を取りながら診療しています。


■検査■

当科では、専門チームによる腎生検、関節超音波、キャピラロスコピー(手指爪の付け根の毛細血管を観察)、筋生検などを積極的に行い、病気の診断、診断後の病勢のモニタリングに役立てています。

腎生検

当科では科内の腎生検班が中心となり全身性エリテマトーデスやANCA関連血管炎などの疾患で腎生検を積極的に行っています。科内で腎生検を行う事で生検結果の理解も深まり、より適切なフィードバックを通して患者さんの抱える問題点を包括的に理解する事ができます。

筋生検

当院では筋疾患に対する筋生検をリウマチ・膠原病内科医が施行しており、神経内科、形成外科と協力体制を構築しています。炎症性筋疾患に類似する遺伝性ミオパチーなどの疾患を鑑別するだけでなく、実際に自分の目で病理を見ることで疾患の理解を深めることが可能となります。

関節超音波

関節超音波検査では触診だけでは分からない関節の腫脹の評価、炎症が起こる部位の正確な判定、薬剤での治療中に残存する病変の評価などに有用で、治療方針に役立てています。

キャピラロスコピー

爪の毛細血管は体外から確認できる数少ない血管です。全身性強皮症を始めとした膠原病では爪毛細血管の所見が重要な手がかりとなる事があります。当科では外来にキャピラロスコピーを常置し、爪郭毛細血管所見を積極的に確認しています。



免疫統括センター

当院では免疫疾患に対して生物学的製剤治療を行うリウマチ・膠原病内科、消化器内科、皮膚科、整形外科、血液内科、眼科、呼吸器内科から医師が集まり、生物学的製剤に特化した治療を行っています。専属の看護師や薬剤師と連携し質の高い医療を提供しています。



かかりつけ医との連携

患者様には初診外来予約をいただきます。
初診時には初診専門外来で時間をかけて問診、身体検査を行い、必要に応じて血液検査、尿検査、X線検査、関節エコー、CT、MRIなどを行います。
リウマチ専門医による診断後、当院で治療開始することも、治療方針ををかかりつけの先生にお伝えして治療を頂く事も可能です。
検査値異常のみで初診時にリウマチ・膠原病の心配がない場合には、再度かかりつけ医の先生にフォローをお願いし、その後異常を認める場合にはあらためてご紹介いただき当院を受診いただくという、かかりつけ医の先生と連携した診療を行っております。






治験・臨床研究

リウマチ・膠原病内科では診療における様々な課題の解決にむけ、患者様に各種研究へご参加いただいています。患者様が来院した際に血液・尿などの検体を頂き病態理解や治療反応性などに役立てる研究、決まったスケジュールに基づいて治療を行い効果を検討する研究(介入研究)、新たな薬剤を用いて効果や安全性を検討する研究(治験)などがあり、何れも倫理委員会での審査を経て許可を得て行っています。該当される方は外来時に担当医よりご説明させていただきます。